モノコックバスが走るまで

「普通の車載貨物」として運べます
『自走可能なんだから、最低限の整備をお願いして自力回送』とも考えましたが、なんせ15年倉庫だった廃車体、『200km超の自力回送は危険』と紹介者さんからのアドバイスがあり、陸送業者さんを探すことにしました
ここで中型バスのCCMだったことが幸いします。高さ3.8m以上の車両の走行には様々な制約があり、当然費用もかさみます
検討した低床ローダー(重機等を運ぶ車)は、荷台高さが大体80cm…これがBUやCJMなら、そのままでは積むと3.8mを超えてしまい、タイヤの空気を抜いたり、ベンチレーターを外したりと一手間かかりますが、全高2.9mのCCMは『普通の車載貨物』として運べます
ちなみに、ヨ談ですが、大畑線の保存会(私の加入前の話ですが)で車掌車を購入した際には、運ぶ前に上下分割し、車庫で組み合わせたそうです。元々上下に分割可能な設計なのだとか

キハとホント合うなぁ
さて、古バス会には、代表(以下私)他、大畑線キハ85動態保存会の会員がおり、そちらでも活動しています
そこに、数年前とあるバス愛好団体さんが、モノコックバス(当時の会社からは引退済)を貸切って運転会にいらっしゃいました
その際、仲間内で『この世代だとボンネットよりモノコックが相性いいね』『キハとホント合うなぁ』という話が出て、私の脳裏に、バスがあれば地域のイベントと連携できるんじゃ…という考えが
そして、幸か不幸か集落暮らしに憧れて移住してきた私の家には、バスが数台置ける位の砂利敷の空き地がありました

じゃあ自分で保存しちゃえばいいじゃん
元々『床が板張りのバスで旅するのいいなぁ、でもどんどんなくなっちゃう…』と思っていた私ですが、ここで『じゃあ自分で保存しちゃえばいいじゃん!』という発想の転換に至ります(トチ狂ったとも言います)
そしてもう一つ、いらっしゃった団体さんのマナーがとてもよく、楽しい方ばかりだったこと
そうなると保存会員のテンションも上がり、予備車を増結しておおはしゃぎ、バスにそれほど興味のない会員さんも『あれは本物のファンだな』と言いながら見送っていました
そして、私はバスファンの仲間もいいなーと思い始めます
何より、モノコックバスと国鉄気動車が揃うと、凄く楽しい!

夢が目標に変わってきます
この頃は、私個人の漠然とした夢でしたが、そのうち、その団体さんが企画した南部バスのCJM乗車会や運転体験に参加『やっぱり板張り路線車といすゞサウンドは最高!』と、子どもの頃の憧れを思い出し、夢が目標に変わってきます
そしてこの時『床が板張りのモノコック路線車が買えそうなら教えて下さいー』と声を掛けることに…
しかし、この頃にはモノコックバスは自家用型ならともかく、路 線型は動態保存的なものしか残っていませんでした
そして、何も知らない私は『状態のいい廃車体なら、整備工場さんにお願いすればどうにかなるんじゃないかな? と、無知と無謀がに後押しされて、廃車体確保+レストアを考えて進み始めました

なんとなく懐かしい雰囲気が伝わりそう
なお、モノコック狙いの主な理由は、古いのが好き! という私の好みもありますが『キハ22と似合いそう!』です
バスファン以外の方にも『なんとなく懐かしい雰囲気が伝わりそう』という理由が大きいです。バスファンだけじゃなく、みんながなんとなく懐かしく感じられるものを…という気持ちがありました
ちなみに、私の譲れないこだわりは『床が板張りの路線車』でした 大好きなP-LVが引退時期を迎えていたのは大きな誘惑に(苦笑)
そして、この頃廃バスを引き上げて再生したり、モノコックバスを個人所有している方々のHPを読んで『個人でもできるんだ、浪漫があるし、大変そうだけど楽しそう!』と
実際、バスの知識と運転技能、機械整備の知識と経験がある方なら、『いい工場さえ見つかれば』機械の方は割となんとかなるんじゃないかと思います
私…? 全部ありませんでした…

そういう目的なら是非譲りたい
さて、思いついてから2~3年、仕様や状態で断念したりしたバスもあったりしましたが、バス友さんからとある連絡がありました 『友人が解体されるって聞いて引き上げてきたいすゞK-CCM410、状態がよくてエンジンもかかるけど、置き場所がないみたい。〇〇さんの事を話したら、そういう目的なら是非譲りたいって』
いすゞ中型モノコック、床は板張り…全て希望通りです 15年間倉庫になっていたのを、自走可能な状態にして(本人曰く、簡単な整備ですぐ復活した)自力回送したとの事
座席はほぼ撤去済、付属機器の多くは失われていましたが、エンジンは絶好調でメインフレームも綺麗に見えました
…でも、書類はない

元所有者の協力が得られれば可能性はあります
車台番号を控え、自宅へ帰ると、時間を見つけて運輸支局さんに相談に行きました
イレギュラーな案件で飛び込み、厳しい対応も覚悟していましたが、非常に親切に対応して頂き、回答は『絶対に通せると断言はできませんが、元所有者の協力が得られれば可能性はあります』 その場で引き上げた方にお電話し、正式に譲渡をお願いしました

バスが我が家にやってきました
さて、所在地の地元業者さんへ電話してみると大体15万円前後、某大手だけ40万円
結局、職場の先輩の伝手で、むつの地元業者さん(親戚だそうで)にお願いした所、そちら方面に行った帰路に拾う形で、7万5千円で運んできてくれました
職場の先輩曰く『どんな業者にも閑散期があるし、運輸業者は空荷で帰るのは無駄だから、いつやるかを相手の都合に任せると、向こうも助かるし交渉しやすいんだ』のだそうで
非常に説得力のある説明です
ともあれ、これで無事にバスが我が家にやってきました
尚、譲渡価格は礼金程度で、ありがたいやら申し訳ないやら…

『みちのく古バス会』
でも、本題はここからです
運輸支局さんに行った際、必要な書類を確認しましたが、元所属のバス会社さんのご協力が得られないことには復活は不可能です
素人でもできそうな作業を進めつつ、計画を進めます
そして、お願いするにあたり、個人名ではやりづらく、元々大畑線の動態保存と合わせての活動のつもりでしたので、保存会関係者や引き上げて下さった方に声をかけ『みちのく古バス会』という団体を作り、修復とナンバー取得を目指すことになりました
実際、ほぼ大畑線保存会の乗合部門な気もしますが(笑)
この後、私が体調を崩したりしてしまい、活動が休止してしまいますが、幸いにしてバスがあるのは私の自宅敷地内
そしてここは本州の北の果ての、さらに隠れ里状態な集落なので、泥棒や破損の心配は少なく、バスの復活を夢見ながら療養に努めることになります


これ動かして地域おこしか、面白そうじゃないか
そして、体調が快復してきた頃、なんという偶然か、地元の元大工さん(塗装が専門)と元整備士さんが『これ動かして地域おこしか、面白そうじゃないか』とボランティアでの整備をかって出てくれ、色々な機材のある元大工さんの所へと回送されていきました
バスの場合、塗装しようとすると最低限、単色でも30万円、前の塗装を落としてまともにやろうとすると70~80万円かかると、業者さんやバス友さんから聞いていました
なので、ヤフオクで安いコンプレッサを買い、見栄えは悪くてもでも自分でやるつもりだったのです
それが下塗り4回上塗り2回、さらに腐食部の補修やシーリングまでしっかりやって下さり、その上元整備士さんが各所の整備をして下さり、かかったのは材料費のみ(合わせて20万円もいかないです) 塗装(乾燥含む)終了直後の車体の感触は感動ものでした
本当に、本当にありがたいことでした

書類集めに動き始めます
これほど古い車は、入庫を嫌がる工場も多いそうなのですが、元整備士さんの紹介で受け入れ先も決まり…担当者さんが旧車をやっているという時点で『当たり』を確信しました…いよいよ最大の難関、書類集めに動き始めます
なお、バスは書類が整うまで我が家に帰還しました
この時点で私の免許は中型8t限定、バスの構造変更(減員)はまだなので、運転はできません …仮に免許があっても、技術的に(苦笑)
バスの回送の際 は、大型免許を持っている方に協力をお願いし、私は随伴車で伴走していました
モノコックバスもあると面白いんじゃない?



さて、まずは再度陸運支局へ
さて、まずは再度運輸支局へ
大分時間が空いたので心配でしたが、こんな怪しげで面倒なお願いにも関わらず、前回に輪をかけて(?)親切に対応して下さいました
その後の問合せにも丁寧に、しっかりと対応して下さって、運輸支局ファン(?)の出来上がりです(笑)
そしてバス会社さんへ、アポをとるべくお手紙をお送りします
活動実績がほぼない古バス会だとアレかと思い、大畑線の保存会の名前を借用、当然会にお願いし(私も会員ですが)快諾されました、というか、みんな知っているので『ついにかー』『全面協力するよ(by会長)』という感じに
また、保存会で何度かイベントに協力し、バスでも何かできないかと相談していた地域おこし団体さんからも推薦状(?)を出して頂き、私の依頼文は某古バス会員にしっかり添削してもらいました(ほぼ書き直しとも言う)

これなら多分大丈夫だと思います
で、アポがとれた時に備えて色々考えていた時お電話が…
『むつですか、遠いでしょう。こちらでやっておきますよ、これなら多分大丈夫だと思います』
…はい? アポのつもりが必要書類があっさりと(汗
かえって迷惑になるかもと思いネットでは名前は出していませんが、某事業者さん素敵すぎです!
本当は直接お礼に向かうべきなのですが、年末年始にかえって迷惑かもと思い、最終的に地元の名産品を詰め込んで、お礼状を添えてお送りしました
いつか、お礼と里帰りを兼ねて、バスイベントの時にでも、CCMにお土産満載で遊びに行こうと固く誓った日でした

製造証明書
さて、バス会社さんから必要書類が届いたのは年末でした
自身で取得、記入可能な他の書類は揃っていて、早速支局さんに申請…しましたが、なにせイレギュラーの上にイレギュラー、おんぼろオブおんぼろ、少し聞いただけでも相当苦心して頂いたようで、いくつか追加の書類が…
その一つが製造証明書でした
しかし、こんな古い車の製造証明書なんて出してもらえるのでしょうか? というか、そもそも問合せ先がわからず、とりあえずいすゞのお客様相談センターへお電話します
びっくりされつつも地元のディーラーさんを紹介され、お手紙と写真を持ってお願いに行きました
